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☆地すべり自動計測の紹介(2001年現在)

(2003.7 一部加筆修正)

【地すべり計測機器の変化】
  • 1950年〜1960年前半までは、地盤傾斜計・地盤伸縮計・触針式水位計・移動杭などの機械式によるものが主流。
  • 1970年代に入ると、計測機器は電気式が導入される。
  • 1980年代になると、現地にて一定期間のデータを蓄積する収録装置が普及(半自動化)。
  • 1980年代後半には、現地へ行かなくともデータの得られる全自動計測システムが実用化。

【地すべりの計測方式の種類】

 地すべりの計測方式は、表-1に示す「手動方式」・「半自動方式」および「全自動方式」の3つに大別される。
 それぞれ機器の発達に伴い、表-2のように分類される。

  • 第1および第2世代が手動方式
  • デジタルデータを回収することが可能になった第3世代が半自動方式
  • 地すべり地に立入ることなくデータを回収する第4および第5世代が全自動方式
 表-1
手動方式 半自動方式 全自動方式
方式の概要  計測器を現地に持ち込んで計測または計測器の記録紙を計測員が回収する方式。
 データはアナログデータであることが多く、回収したデータを数値化した後に、一定の処理を行ない、地すべり挙動の解析や予測などを行なう。
 データ回収間隔は計測器にもよるが、1週間から最大1ヶ月程度。
 現地にセンサーおよびデータロガーを設置して、定期的に現場に立入り、収録データを回収する。
 データは通常、ICカードやフロッピーディスクなどに収録される。回収されたデジタルデータを管理事務所などにおいてコンピューターで所定の出力様式に加工し、地すべりの挙動の解析や予測を行なう。
 データ回収間隔を3〜6ヶ月にできるため、計測員が現場に立入る回数および時間を低減できる。
 文字どおりセンサーなど現場に設置した機器の保守点検を除いては全く現場に立入ることなく、管理事務所などにおいてデータの収録ができる方式。
 データの伝送は現場の収録装置と管理事務所との間で一般公衆回線や無線などを介して行ない、管理事務所でデータを処理することにより、リアルタイムで地すべり挙動を把握することができる。
 ただし、異常データが認められた場合は、現地の確認が重要。
データの集約度 【間欠データ】
計測員派遣時に収集したデータのみ。
【連続データ】
蓄えたデータを一定期間ごとに収集。
【連続データ+即時性】
即時データを収集出くる。
省力度 【小】
計測員の労力が大きい。
【中】
計測員の労力が若干必要。
【大】
全くの省力化。
機器コスト 【小】
各計器とも安価である。
【小】
記録装置に費用がかかる。
【大】
初期のコストが高い。
データの単価 高価である。 中間的価格である。 安価である(大量・高密度であるため)。
データ活用の利便性 計測からグラフ化まで時間を要し、解析着手までに時間がかかる。 データ収集までに時間を要するため、即時性に欠ける。 即時的にグラフ化が可能であり、迅速な解析作業が可能である。
対策への貢献度 【小】 【小】 迅速な対策を施すことができる。
適用範囲 比較的小規模な地すべりや詳細調査計画立案に先立つ概査、あるいは緊急性が高い場合は自動計器設置までの期間に適用される。 比較的緩慢な動きを示す地すべり地の挙動の解明や地すべり対策効果の判定に適用される。
迅速に設置できることから、全自動観測までのつなぎとすることもある。
大規模な地すべりや保全対象の重要度が高い地すべりなど、計測点数が多く、計測頻度が高い場合などに非常に有効である。
見通しのきかない夜間や豪雨時、あるいは地すべりが動いている時など現地立入りが困難な時のデータが即時に確認できる。

 表-2
世代特徴概念図計測方式の区別
第1世代 ・人力にて計測
・1週間に1回程度の計測頻度
手動方式 現在でも多くの地すべり防止区域における計測業務に採用されている。
第2世代 ・アナログレコーダー
・測定期間:1週間〜1ヶ月
・寒冷積雪地では冬期間測定困難
地盤伸縮計などは現在でもこの様な方式・使い方をする場合が多い(特に災害など)。
第3世代 ・デジタルレコーダー
・冬期間測定可能
・監視および予知は困難
半自動方式 簡便に設置でき、連続データが取れるため、半自動方式の計測は更に普及すると考えられる。
第4世代 ・有線伝送方式
・100V(商用電源)とNTT等の回線が必要
・リアルタイム監視が可能
全自動方式 全自動計測方式における現状での主流。今後光伝送などの採用が予想される。
第5世代 ・無線伝送方式
・山間地でもOK
・電源と通信エリアの確保が必要
・リアルタイム監視が可能
設置は比較的簡便であるが、通信が困難と思われる現場が比較的多い。
「安積・南雲(1991)」に加筆修正

「地すべり自動計測システム」の基本構成

 全自動の「地すべり自動計測システム」には、使用するセンサーの特性や計測装置の違い、またシステム設計者の設計思想や現場の状況などによって様々なケースが考えられるが、その基本となるシステム構成はほぼ同じである。
 全自動方式では、センサーからデータ処理用のコンピューターまでがすべてオンラインで接続されており、特別に現地に行くことなく、遠隔地にある事務所などでデータを入手・処理して表示し、蓄積する機能を有している。

【地すべり計測の現状】

 自動計測方式はかなり普及してきたが、その基本は第4世代の方式である。有線での通信が不可能な場合には無線によるデータ伝送を混在して使用しているが、昨今のIT革命などにより急激な進化が続いている。
 なお、第4世代のシステムを導入する際、通信媒体として光ファイバーケーブルを採用すると、計測データのみならず画像などの伝送も可能になり、また雷対策ともなる。現状ではコスト面で不利なためなかなか採用できないが、条件がそろえば積極的な採用が望まれる。


 ところで、ここで紹介した「世代」というのは、表-2の引用先に示すように10年ほど前のものである。当時はインターネットなどというものを身近なものとしては全く考えていなかったと思われるが、今やまさに World Wide に Web が活用できるようになってきた。

【今後の展望】

 第5世代に関しては、山間地における伝送路の確保という点からは理想的なシステムである。しかし、特定小電力無線伝送装置などの免許が不要で安価な装置を採用した場合には、無線伝送装置間(送受信装置間)の見通しがきく必要がある。上位の無線テレメータ装置などは極めて高価であると同時に免許制であることから、迅速に導入することが困難である。
 これに対し、近年、携帯電話のサービスエリアが拡大してきたことと、衛星携帯電話も低価格化してきたことから、条件によっては第5世代も徐々に導入されてくることが予想される。

 また、近年、ハザードマップという言葉が一般に知られるようになり、防災情報の公開が求められるようになって来た。Webの利用は第6世代と言ってよいかと思うが、これにより一般市民が地元の情報、あるいは遠方の親族等の住んでいる地区の情報を得ることも可能となる。
 技術的にはすでにほとんど確立したものであるが、データの管理、配信する情報の責任の所在、通信上のセキュリティ等の課題を解決していかなければならない。


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