建設コンサルタントとは?
★法律による規定
土木建築に関する工事の建設若しくは監理若しくは土木建築に関する工事に関する調査,企画,立案若しくは助言を行うことの請負若しくは受託を業とする者
「公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和27年法律184号)第19条第3号」
★建設コンサルタントの役割
設計者として、調査,計画,設計,施工管理から維持管理まで、公共事業の全般に関与する立場。このため、耐用年数も含めてトータルコストを視野に入れ、建設コスト縮減に向けて最大の努力が求められる。
建設コンサルタントに対する直接の発注者は官公庁であることが多いが、社会資本整備における真の顧客は国民である。このため、建設コンサルタントには「発注者のパートナー」であり、かつ「発注者のエージェント」としての役割が求められる。
【発注者のパートナー】
多様化する国民のニーズに応えて進められる公共事業においては、建設コンサルタントのになう役割と責任が重大である。このため、企画立案の段階から調査,計画,設計,工事監理まで、発注者の技術的パートナーとして自己の専門的能力を発揮し、積極的に発注者に技術的提案をしていることが要請される。
また一方、公共事業の真の顧客は納税者である国民であることから、純粋に技術的判断に基づいて業務を執行するとともに、国民の代理人である発注者の利益を確保するため、当該事業の施工に関して利害関係のない中立・独立な立場を堅持しなければならない。
【発注者のエージェント】
我が国の公共事業は、戦後、国土復興・高度経済成長の基盤づくり、豊かでうるおいのある生活基盤づくりと、総体としては量的な拡大が行われてきた。この公共事業の執行を国民の代理人として担う国等の発注者は、事業量の増大に対応して施工分野の建設業者等への請負化、設計等分野の建設コンサルタントへの委託化を進め、民間技術力の活用をはかり、「発注者−設計者−施工者」の三者の執行体制が確立してきた。
今後の公共事業は、量的な拡大はもとより、その内容は国民のニーズの多様化、そして情報化および国際化に対応することが求められる。これにより、発注機関の技術者には1人当たりの業務量増大のみならず、質の高度化,多様化に対応するために従来に増して専門技術力の確保が求められていく。さらに地域住民サービスや関係機関との調整といった業務も増大すると思われる。
このため、発注者の一部を発注機関の実状に応じ、民間の専門技術者に代行させることが予想されることから、建設コンサルタントは発注者のエージェントとしての役割を果たしていくことが要請される。
★建設新時代
今後の社会資本整備の動向と、これに関連した建設コンサルタントを取り巻く制度的な環境は、きわめて大きな変化を見せている。
【動 向】
- 安全で安心ができ、高齢化の進展も踏まえた豊かで質の高い生活関連施設の整備
- 環境を内部目的化した社会資本の整備
- 国際化に対応した交流拠点の整備
- 社会資本の効率的な整備,建設費の縮減,品質管理等、および管理,運用面での高度情報化の進展
【制 度】
- 事業の複合化・総合化、建設生産システムにおける高度情報化・ソフト化
- 透明性,客観性,競争性を確保した入札・契約制度の定着により、技術と経営と倫理に優れた企業が生き残れる適正な競争市場の形成。
- 公共工事の遂行にあっては、発注者・設計者・施工者の役割と責任の明確化
- 高度情報化による、建設に関わる入札・契約等の執行システム、あるいは調査,設計,施工等の建設生産システムの変革
- 建設市場の国際化(国際規格の採用、外国企業との競争あるいはJV等の協調)
- VE方式、CM方式、あるいはDB方式等の多様な建設生産システムの検討・導入
★建設コンサルタントの課題
「建設新時代」において、建設コンサルタントは公共事業において発注者の良きパートナーとして、さらにエージェントとしての役割を果たすため、ATI構想を掲げている。このため、「技術力とその特性の確保および向上」,「中立・独立性の確保」,「企業基盤の強化」が課題となる。
★VE方式、CM方式、DB方式
- VE(Value Engineering)方式
建設費を縮減できる有効な提案をした者に、縮減額の一部を還元する方式。
民間の保有する技術によるコスト縮減だけではなく、民間の技術開発に対してインセンティブを与えることで長期的に品質確保・向上に結びつく効果を持っている。
- CM(Construction Management)方式
発注者の代理人または補助者として、発注者の利益を確保する立場から、品質管理,工程管理,費用管理等を行う方式。発注者が公共工事の適正な履行を確保する上で必要な体制を整備することが原則。
- DB(Design Built)方式
設計・施工一括契約方式。
公共工事においては、公平な競争を担保するする観点から「設計・施工分離」は原則とすべきである。しかし、民間技術力の積極的活用をはかるべき分野においては、DB方式も有効と考えられている。
★ATI構想
1989(平成元)年5月、建設コンサルタントビジョン研究会(座長:中村英夫東大教授)から建設省経済局長に答申された「建設コンサルタント中長期ビジョン」。
ATI構想には、建設コンサルタントの知的産業としてのPI(Professional Identity)の確立とその健全な発展を目的として、建設コンサルタントの目指すべき将来像として「魅力に満ち(Atractive),技術を競う(Technologically spirited),独立した(Independent)知的産業」が提示された。そしてこの将来像実現に向けて、3つの基本的立場と、8項目からなる業界の自助努力と振興策の方向が示された。
【3つの基本的立場】
- 技術力とその特性の確保および向上
- 中立・独立性の確保
- 健全な企業経営の確保
【8項目の方向性】
- 技術サービス産業とその特性の確立
- 技術競争市場の確保
- 技術開発とデータベース化への積極的取り組み
- 人材の確保
- 成果の品質の確保
- 中立・独立性の倫理の徹底と監視
- 企業経営の安定・強化
- 国際的貢献と国際競争力の強化
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